現在から思えばかれこれ10〜12年前、レーサーとしてGT選手権やスーパー耐久に出場していた頃、サーキットに通う「足」として購入したのが、当時人気の絶頂にあったBMW 318is。もちろん、26才の若造にとって新車でなんか購入できる金額ではなかったので、走行距離25000キロオーバーの中古車だった。価格はさだかではないが、たしか200万円ぐらいという安値だった覚えがある。
その318isは写真にあるようなスタイルではなく、ボディカラーはシルバーでエアロなどは一切なし。ホイールはBMW純正の16インチの細かなメッシュタイプという仕様。前オーナーは初老のお医者さんということでなんとなく納得した記憶がある。初めのうちはこれはこれでエレガントでいいかな!?なんて思っていたが、やはりチューニングカー好きの自分にとって物足りなさが芽生えてくる。というか20代半ばの若造には母親にでも借りてきた車にしか見えなかったのだ。その当時から携わっていたチューニング誌の取材に出掛ければ、編集者やパーツメーカーの広報の人にも「今日は代車ですか?」なんて言われる始末。それほど似合ってなかったということだ。こうなると、頭の中はBMWのチューンのことばかり。いかに自分色に染めていくか考えてみる。幸いなことに辰巳出版から発刊されている「BMWmag」の連載オファもあり、半分仕事、半分趣味みたいな感じで318isのチューニングは始まった。
まず始めに、この318isをチューニングするにあたって自分なりの理想を思い浮かべてみることに…。考え抜いた末に辿り着いたのが当時盛り上がりをみせていたD1スタイル。つまりドリ車ルックである。BMWでドリフト? たしかにBMWには似合わないかもしれないし、パワー的にも辛い。実際にドリフトもしてみたいという願望もあったが、狙いはあくまでもルックス。丘サーファーならぬ丘ドリ車なのである。そこで早速ドリ車ルックには欠かせない車高から手を付けることにした。サスは走りのことも考え橋本コーポレーションからリリースされているオーリンズベースの車高調キットをチョイス。車高は低くなりそれなりに「らしく」はなったが、やはりこれだけでは憧れのスタイルにはほど遠い。
次なる手段はホイールの交換。このホイールのチョイスは車のイメージを作り上げる重要な部分だけに妥協はしたくなく、構想の段階から金スポークの「パナスポーツ・G7 C5C」に決めていた。しかし、自前で持っている「パナスポーツ・G7 C5C」は国産車用のPCDなのでBMWにはそのままでは合わない。BMWのPCDに合わせたホイールをワンオフ製作してもらうこともできるが、目が飛び出るほど高いため断念せざるを得ない。そこでナイトペイジャーという馴染みの金属加工屋さんに出向きPCDチェンジャー製作をしてもらうことに。PCDチェンジャーとはその名の通りPCDの異なるホイールを装着できるようにする変換アダプターで、ホイールとハブの間に噛ませれば、あらっ不思議!?国産ホイールが履けてしまう優れものなのです。これでお気に入りのホイールが履けるようになったのはいいのだが新たな問題が発覚!リアのフェンダーから2センチほどホイールがはみ出しているのである。
もともと国産用のオフセットにPCDチェンジャーを装着しているので何となくは感づいていたものの、こうなってしまうと本来ならお手上げである。しかし、ここまできて引き下がる訳にはいかず、こうなったら最後の手段ともいうべきオーバーフェンダーにしてしまえば問題解決ということになった。しかも後付のフェンダーでは美的と耐久性に問題があるということでフェンダーを叩き出しで作ることに! ついに行くとこまで行ってしまった感はあるが、理想の318isに仕上げるためには必要不可欠な選択だった。こうなると、もう誰にも止められない。フェンダーを加工するならオールペンもついでにしてしまおうということで、ボディカラーはホワイトへ。どうせオールペンするならドリ車らしくエアロも付けよう!ということでMテクエアロを購入。数週間後、板金屋から返ってきた愛車はご覧の通りになったわけです。
元の写真がないだけに読者のみなさんにはこの激変ぶりが伝わりにくいかもしれないが、フェンダーもキレイに仕上がっているし、ホイールともツライチでドリ車風には仕上がったと思います。この後、実際に機械式のLSDに交換してドリフトを試みたが、やはりパワー不足でなかなか角度のついたドリフト走行を決めることはできませんでした。しかし、自分なりに仕上げた車は愛着度が断然に違います。眺めているだけでも満足できる車ってそうないと思います。正直なところ、ここまでやってしまうのは賛成しかねますが、読者のみなさんも自分なりのチューニングやドレスアップを楽しむことで、今よりも絶対にカーライフは楽しいモノになるはずですよ。その後、エンジンのパワー不足を解消するためにコンピューターチューンを試みたり、ターボ化計画もありましたが、ワンオフでのエキマニ製作やコンピューター制御の問題などで実現には至らなかったが、いま思い返してもこの318isをチューニングしていた数年間は本当に楽しかった良い思い出です!